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雑文

キ印ぞろいのお茶の会の冒険の改題の遷移

創元推理文庫の世界短編傑作選4には、エラリー・クイーンの「キ印ぞろいのお茶の会の冒険」が収録されている。
今私の手元に2冊の同書があり、最近新装版で刊行された世界推理短編傑作集4もある。
この3冊の内容はおおむね同じだが、新装版の世界推理短編傑作集4のみ、本来世界短編傑作選5に収録されていたベイリーの「黄色いなめくじ」が収録されており、少し違いがあるようだ。

しかし今回取り上げる内容はそこではなく、「キ印ぞろいのお茶の会の冒険」の改題についてである。
まず1992/11/6の48版がコレだ。

queen.jpeg

そして、2004/3/5の50版が以下になる。

queen2.jpeg

48版では「キ印ぞろいのお茶の会の冒険」だが、50版では「は茶め茶会の冒険」へと変更された。
どちらも翻訳は井上勇であるが、50版には以下の注釈がある。

※不思議の国のアリスに関する記述を変更したこと
※mad tea partyを「キ印ぞろいのお茶の会」から「は茶め茶会」に変更

つまり、不思議の国のアリスのmad tea partyという記述をを柔らかく表現するため、その結果が50版による改題なのだろう。
49版は手元にないため未確認だが、仮に49版で改題されていたら、50版に上記の注釈をする必要はない。
よって、49版も「キ印ぞろいのお茶の会の冒険」であると思われる。

同書の新装版である世界推理短編傑作集4では、「いかれたお茶会の冒険」とさらに改題され、翻訳も井上勇ではなく中村有希になった。

私が最初に読んだのは、「キ印ぞろいのお茶の会の冒険」であったため、改題と更なる改題にあまり感心はしない。
しかし、これは私が旧版に慣れ親しんでいたからである。
その作品が発表された当時、または翻訳された当時の雰囲気を作中から感じ取ることができるのも、古き良き題名の利点だろう。
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