個人的にハードボイルドにそれほどこだわりはないが、やっぱり知名度的に読んでおきたかった。
感想は一言、...いい作品だった。
「ギムレットには早すぎる」という有名なセリフが本作に登場するが、お前が言うのかと。
てっきり夕暮れ時のバーで女からの誘いを断るとき使うようなムーディスティックな場面を想像していたが、まさかあの人物の言葉から聞けるとは...。
チャンドラー初心者としての本作の印象は、文字やセリフの言い回しや描写の仕方が、読者の情緒に訴えることを念頭に書かれているように思える。
また、主人公であるフィリップ・マーロウの心理描写がほとんど、というよりまったくないようにも思える。(気のせいかもしれないが)
ハードボイルドとは、よくボイル(茹でた)した卵のことを言うらしいが、作中に登場する主人公以外の登場人物の心情に惑わされない、または左右されない芯の強さ(固さ)がよく表現されているように思う。
レノックスがマーロウの家を訪ねた時も、留置所に数日間ぶち込まれた時も、マーロウがどのような心理であったかは描写されていなかった。
また、すべて忘れろという手紙を読んだ後に、本当に忘れて別の事件を引き受けるという話の進展は、日本人作家であれば絶対に書けない展開であろう。
国内作家であれば、友の無念を晴らすというストーリーになるのは想像に難くない。
だからこその最期のあの場面が生きてくるような気がする。
入荷。
凶銃ルーガーP08(大藪春彦)
ドラゴン殺人事件(S・S・ヴァン・ダイン)
機動警察パトレイバー 風速40メートル(伊藤和典)
The Great Adventures of Dirty Pair(HARUKA TAKACHIHO)
霧ホテル(赤江瀑)
薔薇への供物(中井英夫)
薔薇色翠星歌劇団(宝野アリカ)
聖剣伝説 レジェンドオブマナ あまたの地、あまたの人(細江ひろみ)
ファイナルファンタジー2 夢魔の迷宮(寺田憲史)
伯母殺人事件(リチャード・ハル)
押川春浪回想譚(横田順彌)
魔法の国が消えていく(ラリー・ニーヴン)
早瀬未沙 白い追憶(大野木寛)
魔像 林不忘傑作選6(林不忘)
そういやTwitterに大坪砂男がランキング入りしていたので、調べたらそういうことかと。
大坪砂男は佐藤春夫に弟子入りしたためか、探偵小説に文学要素を取り入れるという困難というか迷惑なことを進んでしていたという。
そのくせ、プロットを文字にすることに恐怖していたと弟子である都筑道夫から暴露されていたので、本人も相当思い悩みながら作家活動をしていたのだろう。
また、ある人物の短編にケチをつけて入賞を妨害したことがあるらしく、1960年日本推理作家協会賞の大下宇陀児、城昌幸、高木彬光各選考の評を読めば、文学派という視点から本格物に敵意を持っていたことがわかる。
他にも、宝石に掲載された作品を酷評したりと、ことごとく意地の悪さが目に付く作家であるが、何か嫌いになれない作家なのよねー。
あと奇術研究家の阿部徳蔵の甥らしいのだが、いまだに確証がないところをみると、謎は永遠に謎のままなのだろうな。
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