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雑文

柳香書院と国書刊行会

ナイオ・マーシュの「ランプリイ家の殺人」を購入。

J・T・ロジャースの「赤い右手」やデイリーキングの「タラント氏の事件簿」にような一部の作品は文庫化して比較的見かけるようになっているが、ナイオ・マーシュやグラディス・ミッチェルあたりだと単行本留まりの印象が強いというかそれが現状といったところ。
そもそもこれら作家や作品は、最近になって翻訳されたものが多いので、求める読者はそういう事情を知ったもの好きであることは否定できない。
「ランプリイ家の殺人」もその一例ということになる。

作品自体はまだ読んではいないが、月報に鮎川哲也のエッセイが載っている。
A・フィールディングの「停まった足音」の解説と多少重複するが、国書刊行会に対し柳香書院の二の轍を踏むなと述べている。
鮎川哲也自身、作品の出来の良し悪しよりも、それら作品に対する興味の方が勝っているのだろう。
珍品に対する憧憬には同調も禁じ得えず、このあたりは当時を生きてきた者だからこその心境といえるだろう。

柳香書院は戦前に存在した出版社だが、海外探偵小説30作品を翻訳して出版する予定だったところ、5冊出版されたところで企画が頓挫したという。
その30作にはクリスティやクイーンといった今ではメジャーな作家も含まれていたが、最近になってようやく翻訳された作家や、現在でも気軽に読めない、または名前のみ知られるといった作家、もはや誰だよといった作家が多く名を連ねていた。

例を挙げると、

ハリントン・ヘキスト「誰が駒鳥を殺したか」
A・フィールディング「停まった足音」
リン・ブロック「ゴア大佐の推理」
フィリップ・マクドナルド「鑢」
アントニイ・バークリイ「ウィッチフォード毒殺事件」
ロジャー・スカーレット「エンジェル家の殺人」
S・A・ステーマン「六死人」
アーサー・リース「闇の中の手」
ミニヨン・G・エバハート「暗黒の階段」
テンプル・エリス「矛盾する悪人」
ワルター・ハアリヒ「妖女ドレッテ」
フランク・ヘルレル「皇帝の古着」
ストラハン「牧場の怪事件」
ノイズ・ハート「ベラミイ事件」

といったところ。

希少な作品がひしめき合っていると想像するだけでも楽しい。
特に最後の3名に関しては名前すら聞いたことすらなく、ストラハンにいたってはフルネームさえもわからない。
これら作品の選考には、海外作品に造詣の深い江戸川乱歩や翻訳家の井上一夫らが行ったというのだから、作品としてのレベルは水準以上であることが予想される。
オースチン・フリーマンの「鸚鵡」やジョン・ロードの「プレード街」あたりはイマイチだったと鮎川哲也が述べているが、私としてはどんなに出来が悪かろうと読めればそれだけで十分なのだが。

選考された30作品の中で、クリスティは「十二の刺傷」と「スタイルズ」、クイーンは「X」と「Y」で2作品ずつ、フィルポッツにいたっては「赤毛」「闇から」「駒鳥」と3作品もあるので、フィルポッツ作品を高く評価していた江戸川乱歩の贔屓があったようにも思える。
しかしヘキスト=フィルポッツを知っていたかは不明なので何とも言えない。

江戸川乱歩の蔵書の中に「アーサー・リース」「テンプル・エリス」と並んで「フランク・ヘラー」という作家の本があったような気がする。
フランク・ヘルレルとフランク・ヘラーは似ているが別物なのだろうか。

入荷。

小鼠月世界を征服(レナード・ウイバーリー)
タイム・トンネルの冒険(レスター・デル・レイ)
手塚治虫COVER エロス篇(デュアル文庫編集部編)
サンダーロード(鳴海丈)
誇りへの決別(ギャビン・ライアル)
映画「キューティーハニー」小説版(鴉紋洋)
魔界の盗賊(マイクル・シェイ)
真昼の侵入者(福島正実)
影の護衛(ギャビン・ライアル)
銃、ときどき音楽(ジョナサン・レセム)
時の顔(小松左京)
ダンピール狩り 吸血鬼ハンター外伝(朝川ユウキ)
竜の哭く谷 夢語り詩1(妹尾ゆふ子)
パワー・オブ・ドリーム(前田日明)
挑戦者(大藪春彦)
地獄に堕ちた者ディルヴィシュ(ロジャー・ゼラズニイ)
小説現代新人賞篇 文学賞受賞・名作集成8
栄光のトライ(馬場信浩)
支那扇の女(横溝正史)
暗黒星雲(フレッド・ホイル)
ドラッグオンドラグーン(愛沢匡)
巨神兵を倒せ!(下村家恵子)
バラバの方を(飛鳥部勝則)
ラヴクラフトの遺産
橡家の伝説(佐々木丸美)
季題体験(戸板康二)
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