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ドゥーゼとビーストン

妹尾アキ夫翻訳コレクション「至妙の殺人」(論創海外ミステリ)が出ていることを知る。
ここに翻訳されているのがビーストンというのだからそりゃ興味持つだろうという話だ。

私にとってビーストンとドゥーゼは名前しか知らない作家であるが、それは安易に読むことができないからであると苦しい言い訳をしておく。(青空文庫的なものがあるのかは知らん)
一度、「世界推理小説大系5 チェホフ・ドゥーゼ」(東都書房)を見かけたことがあるが、結局手が出せなかった。
ここに収録されているのが、チェーホフの「狩場の悲劇」とドゥーゼの「スミルノ博士の日記」なのだから、どのようなコンセプトで作品を決めたかがわかろうというものだ。

ビーストンとドゥーゼは戦前に多くの翻訳が出されており、江戸川乱歩をはじめとする作家や翻訳家が紹介していたことは知っていた。
しかし、これら作品を読むには当時の雑誌を求めなければならないという現状から、この両作家に対する世間の需要はまったくないと考えるほかはないだろう。
昔の作品だから完成度こそ高くはないが、当時一世を風靡したということは事実なのだから、古典として認めることに異議を唱える者はいないはずである。
そんななか、新訳でなく当時の訳で出版されることに大きな意義があるように思う。
偉そうに言ってはみたが、ビーストンとドゥーゼがどんな作家だったのかについて知らないので、手元の資料(光文社の新青年傑作選等や中島河太郎の探偵小説辞典)でこれら作家を調べてみる。

S・A・ドゥーゼ(サミュエル・オーガスト・ドゥーゼ)はスウェーデンの作家。
小酒井不木が知人に紹介された結果として翻訳されるに至る。
南極探検家でもあったらしく、本国での人気はフランク・ヘルラーやスヴェン・エルウエスタットと比肩。
このフランク・ヘルラーはおそらくフランク・ヘラーのことだと思われるので、ヘラーの作品を読んでいた(時期は不明だが)江戸川乱歩も好意的に迎えてたものと思われる。
ドゥーゼの作品で最も有名なのが「スミルノ博士の日記」(1923年翻訳?)であり、「アクロイド殺人事件」で有名な叙述トリックの先駆けとされているが、マスロフスキーなる人物によると、エルウエスタットにも同様の趣向を凝らした作品があるらしく、しかもそちらの方が先に書かれていたらしい。
そうなると叙述トリックの先駆けはエルウエスタットとなるが、なんという作品であるかは不明なのでどうしようもない。

どなたかここにエルウエスタットを研究されている方はいらっしゃいませんかー!

長編は以下が翻訳されている。
夜の冒険
毒蛇の秘密
生ける宝冠
スペードのキング
四枚のクラブの一

これらはおそらく短編か中編
名探偵
三発の射撃
三三二号の箱
モデル
夜の謎
十七歳のエルザ

今更であるが、なぜビーストンだけでなくドゥーゼも取り上げたかというと、どちらも「昔は多く翻訳が出ていたが、今では忘れ去られた作家」だからである。
そんな作家は探偵小説家に限っても星の数ほどいるが、私の中でその最たるものがドゥーゼとビーストンなのである。

L・J・ビーストンは経歴不明のイギリスの作家。
翻訳当時はもてはやされた流行作家であるが、上記のように最近になってようやく刊行されたという点を見ると、これだけ多種多様の作品があふれかえる現在ではイマイチ味気ない作家という位置づけになっている。
論理的でない作風が多いためか、本格探偵小説が少なかった当時では貴重であったが、現在では娯楽小説作家以上の価値は見いだせないとのこと。
クイーンが編集した「短篇書誌」に、マッカレーとビーストンがないことに疑問を持った江戸川乱歩がその旨を編者に伝えたことがあり、返信はなかったが翌年のEQMMに突如ビーストンが取り上げられたという逸話がある。
クイーンはなぜビーストンを突然取り上げたのか、その背景に乱歩の影響はあったのか、今では誰も知ることはない。

もっとも有名な作品が「マイナスの夜光珠」だろうか。
パイプ
シヤロンの灯日
ヴォルツリオンの審問
死者の手紙
東方の宝
三百三十三号室
盲目の猛犬
シヤロンの淑女
闇の手
悪漢ヴォルシヤム
過去の影
愛してはならぬ女
無慈悲な懺悔
人間表
約束の刻限

間牒
決闘用の拳銃
緑色の部屋
夜の静
緑色の人魚
一月二百磅
星の私語
決闘家倶楽部
浮沈
廃屋の一夜
クレッシングトン夫人の青玉
形見の猫目石
十万磅
黄昏
悪魔の笑ひ
真鍮の燭台
二枚の肖像画
めくら蜘蛛
子守唄
四人の滞在客
なさけ
軋る階段
懺悔の石
プラーグの三人娘
地球は硝子
深夜の客
深夜の晩餐
赤い窓掛
マーレイ卿の客
地獄の深淵
旧悪
幻の遺書
薔薇と菫
幽霊階段
地底の金塊
虎の顎
二通の封筒
慰謝料一万磅
ダイヤのジャック
霧雨の夜の唄
出獄の日の出来事
脅迫
決闘
洞窟の蜘蛛
頓馬な悪漢
鬱陶しいプロログ
夜の雨
五千ポンドの告白
犯罪の氷の道
生の緊張
闇の中の女
留針
ビライスキイ侯爵の懺悔
不知火

「磅」はポンドと読む。
重さの単位でもあるが貨幣の単位でもある。
タイトルに使われている意味は貨幣の方だろう。(多分)

とにかくビーストンの作品が読めるのはうれしい。
ドゥーゼも顧みられるとなおのことうれしい。

入荷は以下。
全然更新してねえな。

疑惑の果て(カトリーヌ・アルレー)
影なき男(ダシール・ハメット)
黒衣夫人の香り(ガストン・ルルー)
ロカノンの世界(アーシュラ・K・ル・グィン)
不屈の女神 ゲッツェンディーナー(菅浩江)
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